
「家族に迷惑をかけたくない」
リハビリ施設で、何度この言葉を聞いたでしょうか。
79歳、心臓病身体障害者1種1級の私自身も、同じ不安を抱えています。
今日は、この「迷惑をかけたくない」という思いと自己肯定感の
関係について、当事者の視点でお話しします。
「迷惑をかけたくない」の正体
高齢者が抱える3つの恐怖
①身体的な不安
歩けなくなったら
トイレに一人で行けなくなったら
食事が自分でできなくなったら
寝たきりになったら
②経済的な不安
医療費の負担
介護費用
生活費
子どもへの金銭的負担
③精神的な罪悪感
子どもの人生を奪う
子どもの時間を奪う
子どもの自由を奪う
家族の負担になる
私自身の不安
心臓病身体障害者1種1級の私:
夜中に考えること:
もし心臓発作で倒れたら
妻一人で対応できるか
子どもたちに迷惑をかけるのでは
寝たきりになったら
この不安が、自己肯定感を大きく下げています。
リハビリ仲間の本音
81歳の佐藤さん(仮名)の話
息子夫婦と同居していますが:
「申し訳なくて、申し訳なくて。
何もできない自分が情けない」
具体的な悩み:
階段の上り下りに時間がかかる
食事の準備ができない
トイレまで時間がかかる
夜中に起きると家族を起こしてしまう
「いっそ、いなくなった方が家族のためでは?」
この言葉を聞いた時、胸が痛みました。
76歳の鈴木さん(仮名)の話
娘から「一緒に住もう」と言われましたが、断りました。
理由:
「娘の人生を犠牲にしたくない」
「孫の教育費が必要な時期」
「娘夫婦の時間を奪いたくない」
結果:
一人暮らしを選択し、孤独と向き合っています。
でも本心は:
「一緒に暮らしたい」
「家族と過ごしたい」
「孤独は辛い」
「迷惑」という言葉の重さ
親が「迷惑」と言う時の本当の意味
表面:
「迷惑をかけたくない」
本心:
愛されたい
必要とされたい
でも負担になりたくない
拒絶されるのが怖い
「迷惑」と言わせてしまう社会
①核家族化
三世代同居の減少
②個人主義
「自分の人生」重視
③介護の負担イメージ
メディアで語られる大変さ
④高齢者の孤立
社会との断絶
子どもが伝えるべき本当の気持ち
①「迷惑」ではなく「当然」
❌「迷惑じゃないよ」
✅「親の面倒を見るのは当然のこと。今まで育ててくれた恩返しがしたい」
②具体的な感謝
❌「今まで色々ありがとう」(抽象的)
✅「お父さんが働いてくれたおかげで、私は大学に行けた。その恩を返したい」(具体的)
③一緒にいたい気持ち
❌「世話してあげる」(上から目線)
✅「一緒にいたい。お父さんやお母さんと過ごす時間が大切」(対等な関係)
④Win-Winの関係
❌「我慢して面倒を見る」
✅「お父さんがいてくれると、私も安心。子どもたちもおじいちゃんと過ごせて嬉しい」
私が息子に言われて救われた言葉
あの日の会話
心臓の調子が悪く、「迷惑をかけて申し訳ない」と言った時:
息子の言葉:
お父さん、迷惑なんて思ったことないよ。
お父さんが元気でいてくれることが、一番嬉しいんだ。
お父さんがいなくなったら、僕が困る」
この言葉で:
涙が止まらなかった
生きていていいんだと思えた
自己肯定感が回復した
もう少し頑張ろうと思えた
なぜ救われたのか
①「迷惑」を否定してくれた
自分の存在を肯定
②具体的な感情を伝えてくれた
「嬉しい」「困る」という本音
③対等な関係
上下ではなく、お互いに必要
「迷惑をかけない」ために親ができること
①健康管理の徹底
私が実践していること:
毎日の歩行(30分)
薬の管理
定期検診
リハビリ継続
食事管理
目的:
できるだけ自立した生活を維持
②できることは自分で
自立の範囲:
身の回りのこと
簡単な家事
買い物(可能な範囲で)
健康管理
依存しすぎない努力。
③社会とのつながり維持
孤立しない工夫:
リハビリ仲間との交流
地域活動参加
ブログ運営
オンラインコミュニティ
家族だけに依存しない。
④準備と計画
いざという時のために:
緊急連絡先の整理
かかりつけ医の情報
延命治療の希望
財産の整理
エンディングノート
準備することで、家族の負担を減らす。
家族ができる具体的サポート
①「迷惑」という言葉を使わせない
親が「迷惑かけて」と言った時:
❌「大丈夫、迷惑じゃないから」(否定のみ)
✅「お父さんがいてくれることが幸せ。迷惑なんて言わないで」(感情+否定)
②小さな役割を維持
できることを見つける:
孫の宿題を見る
料理の一部を手伝う
洗濯物をたたむ
植物の水やり
「役に立っている」実感が自己肯定感を支えます。
③将来の不安を一緒に考える
避けない、話し合う:
「もし〇〇になったら、どうしたい?」
「一緒に考えよう」
「準備しておこう」
不安を共有することで、孤独感が減ります。
④定期的な「大切」のメッセージ
日常的に伝える:
「お父さんがいてくれて嬉しい」
「一緒に過ごせて幸せ」
「長生きしてね」
繰り返し伝えることが重要。
寝たきりへの恐怖と向き合う
80歳目前の現実
リハビリ仲間の多くが言います:
「寝たきりになったら、どうしよう」
「オムツになったら、死にたい」
「人の手を借りる人生なんて」
私も同じ不安を抱えています。
でも気づいたこと
妻の言葉:
「寝たきりになっても、あなたはあなた。私はあなたと一緒にいたい」
この言葉で:
「できない自分」でも価値がある
愛情は能力に依存しない
存在そのものに意味がある
介護は「負担」だけではない
子世代に知ってほしいこと
親の介護を通じて得られるもの:
①親への恩返しの機会
育ててもらった恩を返せる
②家族の絆の深化
困難を共有することで深まる絆
③子どもへの教育
親を大切にする姿を見せる
④自分の将来への学び
いつか自分も同じ道を歩む
⑤後悔のない別れ
「あの時、もっと」という後悔を減らす
リハビリ仲間の息子さんの言葉
父親の介護を3年間した50代男性:
大変だったけど、後悔はない。
むしろ、父との最後の時間を大切にできて良かった。
子どもたちも、おじいちゃんを大切にすることを学んだ」
まとめ「迷惑をかけたくない」の裏にあるもの:
愛されたい
必要とされたい
でも負担になりたくない
拒絶が怖い
子どもが伝えるべきこと:
「迷惑」ではなく「当然」
具体的な感謝
一緒にいたい気持ち
Win-Winの関係
親ができること:
健康管理
できる範囲での自立
社会とのつながり
準備と計画
家族ができること:
「迷惑」という言葉を使わせない
小さな役割の維持
不安を一緒に考える
定期的な「大切」のメッセージ
79歳からのメッセージ:
「迷惑をかけたくない」と思う親の心は、愛情の裏返しです。
「一緒にいたい」という言葉が、どれほど救いになるか。
次回は「失敗を恐れない環境作り」についてお伝えします。