
2025年12月14日、世界の安全保障の要衝であるグアム島に、米海軍のニミッツ級航空母艦「エイブラハム・リンカーン(CVN-72)」が姿を現しました。このニュースは、単なる一艦艇の寄港に留まらず、現在進行形で激変するインド太平洋の軍事バランスを象徴する極めて重要な出来事です。
「なぜ、このタイミングでリンカーンはグアムに入港したのか?」「同時期に展開している空母ジョージ・ワシントンとの関係は?」「そして、中国はどう動くのか?」
本記事では、最新の公開情報と軍事戦略の専門的な知見に基づき、米空母リンカーンの動向が示す「対中抑止の新展開」と、2026年に向けたアジア情勢の行方を、どこよりも詳しく解説します。この記事を読めば、ニュースの裏側に隠された「米国の本気」が見えてくるはずです。
1. エイブラハム・リンカーン空母打撃群(ABECSG)の最新動向
2025年12月、グアムのアプラ港に接岸したエイブラハム・リンカーンは、単独で動いているわけではありません。強力な護衛艦艇を伴う「空母打撃群(CSG)」として、圧倒的な打撃力を保持したまま展開しています。
1-1. 随伴艦と第5世代航空戦力の構成
今回のリンカーン空母打撃群(ABECSG)を構成するのは、最新鋭のミサイル駆逐艦たちです。これらは、空母を敵の潜水艦やミサイルから守るだけでなく、トマホーク巡航ミサイルによる精密打撃能力を備えています。
- USS スプルーアンス (DDG-111):イージス・システム搭載の主力駆逐艦。
- USS マイケル・マーフィー (DDG-112):高い対潜・対空能力を誇る。
- USS フランク・E・ピーターセン・ジュニア (DDG-121):最新のミサイル防衛能力を装備。
さらに注目すべきは、艦載されている第9空母航空団(CVW-9)です。ここには、レーダーに捕捉されにくい第5世代戦闘機「F-35C ライトニングII」が含まれており、中国軍のレーダー網を無効化し、内陸部まで打撃を与えることが可能です。
1-2. グアム寄港の軍事的意味
グアムは、ハワイよりもアジアに近く、米国の主権が及ぶ「不沈空母」とも称される拠点です。リンカーンがここで補給とメンテナンスを行ったことは、西太平洋での長期作戦を維持するための「ハブ」として、グアムが再定義されていることを示しています。
2. 「ダブル・プレゼンス」戦略:米国の二正面抑止
今回のリンカーン展開において、最も特筆すべきは、横須賀を母港とする空母「ジョージ・ワシントン(CVN-73)」との同時展開、いわゆるダブル・プレゼンス(二隻同時展開)の状態に近付いている点です。
2-1. 中国に対する強力な軍事的シグナル
通常、一隻の空母が展開するだけでも周辺国にとっては大きな脅威ですが、二隻の空母打撃群が連携するとなると、その戦力は一国の軍事力に匹敵します。これは、中国の台湾海峡への圧力や、南シナ海での人工島基地化に対する、米国からの「明確なノー」の回答です。
2-2. 統合多国間演習の可能性
リンカーンはグアム出港後、日本の海上自衛隊やオーストラリア海軍との共同演習に移行すると予測されています。2025年12月初旬には、米軍B-52爆撃機と自衛隊F-15による共同訓練も実施されており、空・海が一体となった対中包囲網が形成されつつあります。
3. 2026年に向けた米中政策とインド太平洋の焦点
米中関係は「競争」から「抑止のぶつかり合い」へと深化しています。今後数カ月で注目すべきポイントは以下の3点です。
3-1. 台湾総統選後の空白期間の警戒
台湾情勢は常に不安定ですが、米空母が頻繁にグアムやフィリピン近海に出没することで、中国による武力行使のコストを引き上げています。リンカーンの存在は、台湾周辺での偶発的な衝突を防ぐための「重石」の役割を果たしています。
3-2. 南シナ海における「航行の自由」
中国が主張する「九段線」に対抗するため、米軍はリンカーンを南シナ海へ派遣し、国際法に基づく航行の権利を主張し続けるでしょう。これに対し、中国海軍も空母「山東」や「遼寧」を動かす可能性が高く、海上の緊張はピークに達すると予想されます。
3-3. 日本の役割:日米同盟の深化と防衛力強化
米空母がグアムを拠点に動く際、日本国内の基地(嘉手納、岩国、横須賀)との連携は不可欠です。日本政府が推進する反撃能力の保有と、米軍の動向がリンクすることで、東アジア全体の抑止力が一段階引き上げられることになります。
4. 結論:私たちはこの動向をどう見るべきか?
2025年12月14日のリンカーン・グアム到着は、平穏な寄港ではありません。それは、米中という二大巨頭が、インド太平洋というチェス盤の上で最も重要な「駒」を動かした瞬間です。
私たち日本国民にとっても、これは遠い国の出来事ではありません。リンカーンの航跡は、そのまま日本の安全と直結しています。今後もアウローラでは、これら軍事・外交の最新情報をどこよりも早く、深くお届けしていきます。