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難民申請の悪用と就労ビザの壁:日本の入管制度が抱える問題と政府の対応策を徹底解説

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難民申請・悪用のイメージ画像 後期高齢者の日常コラム|人生・社会・京都

【徹底解説】難民申請の悪用と就労ビザの壁:日本の入管制度が抱える問題と政府の対応策

近年、一部の外国人による日本の難民申請制度の「悪用」が社会問題化しています。 本来、生命の危険から逃れてきた真の難民を保護するための制度が、主に「就労目的」で利用されている現状があります。 これは、日本の就労ビザ取得の厳しさと、難民認定申請中の「特定活動」ビザによる就労許可という制度の“穴”に起因しています。 この問題の背景、政府の対応策(主に改正入管法の論点)、そして制度が抱える根本的な問題点について詳しく解説します。

1. 難民申請が悪用されるメカニズムと背景

多くの外国人が日本での滞在・就労を目指す際、正規のルートは「就労ビザ(在留資格)」の取得です。しかし、このハードルは決して低くありません。

✅ 就労ビザ取得の壁

  • 雇用契約の必須: 就労ビザ(例:技術・人文知識・国際業務)を取得するには、日本の企業との正式な雇用契約が必須です。
  • 学歴・職歴要件: 大卒以上の学歴や、特定の分野での実務経験など、職種に応じた厳格な要件が定められています。
  • 日本語能力: 特定技能や技能実習を除く多くの高度な職種で、実質的な日本語能力が求められます。

これらの要件を満たせない外国人、特に職歴や学歴が不十分な外国人にとって、正規の就労ビザへの切り替えは非常に困難です。

✅ 制度の“穴”:「特定活動」による就労

一方、日本の難民認定制度には、以下の構造的な問題がありました。

  1. 申請回数制限の不在: 過去、難民申請は何回でも可能でした。不認定になっても再申請を繰り返すことで、長期滞在を継続できました。
  2. 審査期間の長期化: 審査が平均で2年11ヶ月(報道された当時のデータ)と長期化し、その間に申請者は「特定活動」という在留資格を与えられました。
  3. 就労許可の付与: 申請から一定期間(例:6ヶ月)経過後、「職種を問わず就労可能」とする許可(資格外活動許可)が与えられるケースがありました。

結果として、「難民申請」をすることが、日本で合法的に滞在し、職種を選ばず働くための手段として悪用される構図が生まれました。これは、真の難民保護という制度の目的を大きく歪めるものでした。

2. 政府の対応策:改正入管法(2023年施行)の骨子

政府は、この問題に対処するため、長年の議論を経て「出入国管理及び難民認定法(入管法)」の改正(2023年6月成立)を断行しました。この改正は、制度悪用を防ぐための厳格化と、真の難民を迅速に保護するための迅速化を両立させることが目的とされています。

✅ 難民申請の厳格化・迅速化の柱

  • 送還停止効の例外規定の導入:

    最も大きな改正点です。従来は、難民申請中は一律に強制送還が停止されていました(送還停止効)。しかし、改正法では、3回目以降の申請者について、明らかに難民と認められない理由(迫害の恐れがない国・地域からの申請など)がある場合、原則として送還停止効を停止し、本国へ送還できるようになります。

  • 申請回数の制限と迅速な審査:

    「難民申請を繰り返すことによる滞在」を防ぐため、一定の要件を満たさない再申請者に対しては、より厳格な審査を行い、迅速に結論を出す体制を強化しました。

  • 「補完的保護対象者」制度の創設:

    真の難民ではないものの、本国に送還すると深刻な人権侵害の恐れがある人々を保護するため、「補完的保護対象者」という新たな区分を設けました。これにより、真に保護が必要な人々を、従来の難民認定とは別の枠組みで救済する道筋が明確化されました。

3. 制度が抱える根本的な問題点と今後の課題

改正入管法は制度悪用の抑止力として期待されますが、この問題は、単に「厳格化」するだけで解決するものではなく、日本の外国人労働者受け入れ体制全体が抱える構造的な課題が絡んでいます。

✅ 課題1: 人道的な配慮と制度悪用のバランス

改正法に対しては、「真の難民が送還されるリスクが高まるのではないか」という批判もあります。難民か否かの判断は極めて難しく、3回目以降の申請者を一律に厳格化することは、国際的な人権基準との整合性という点で常に議論の的となります。制度の運用においては、「厳格化」と「人道的な保護」のバランスをどのように取るかという、極めて困難な課題が残ります。

✅ 課題2: 外国人労働者受け入れ制度の複雑性

難民申請の悪用が横行する最大の背景は、「日本で働きたい」というニーズと、正規の就労ビザ制度のミスマッチです。 現在の日本は深刻な人手不足でありながら、高度な専門職以外の単純労働分野での正規の在留資格(特定技能を除く)は厳しく制限されています。 この「単純労働分野における受け入れ口の狭さ」が、外国人に違法な手段や制度の“穴”を探させる動機となっています。 政府は、「特定技能」制度を拡充していますが、この制度が実質的な単純労働の受け皿として機能しつつも、まだ十分な受け入れ体制とはなっていません。

✅ 課題3: 審査体制の強化と適正化

難民申請の長期化は、入国管理庁の審査体制の不備も原因の一つです。申請が急増しても、人員や語学力の確保が追いつかず、審査が滞ることで「特定活動」での滞在期間が延びてしまいました。 改正法の実効性を高めるためには、審査官の増員、専門性の向上、そして迅速で公正な審査を実現するためのAIなどの技術導入が不可欠です。

4. まとめ:必要なのは「厳格化」と「外国人政策の再構築」

難民申請の悪用問題は、日本の入管制度の機能不全を示していました。政府は改正入管法によって悪用の抑止力は確保しましたが、真の解決のためには、「制度の厳格な運用」と「日本がどのような外国人労働者を、どのような分野で、どのように受け入れるのかという国家戦略の再構築」が求められます。

難民申請の厳格化によって、日本での滞在が困難になった外国人労働者の受け皿を、「特定技能」や「技能実習」の適正化によって整備し、正規ルートでの就労を容易にすることが、制度悪用という“モグラ叩き”から脱却するための鍵となるでしょう。 制度の厳格化は急務ですが、それはより広範な外国人政策の適正化とセットで進める必要があります。

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